『ブランコのむこうで』星新一(新潮文庫)

何年も前に読んだ大好きな本を再読しました。
なるべく紹介する作家はかぶらないようにしたいなと思っているのですが、この本はどうしても紹介したいなぁと思いまして…
珍しくショートショートじゃない星新一作品です。表紙も大好き。かわいい。

学校の帰り道、主人公の「ぼく」は自分によく似た少年を見かけ、後を追いかけます。
それは、夢の中から出てきたもうひとりの「ぼく」でした…。

さまざまな人たちが見ている夢の中の国を「ぼく」が旅するお話です。
夢の国は、その人が現実の世界で叶えることができない願いや強い思いが映し出された世界。
誰しも自分だけの夢の国を持っていて、毎晩眠りにつくとその国でひとときを過ごし、朝が来ると現実世界に戻っていく。
一見可愛いファンタジー的なお話だけど、どこか寂しさや切なさを感じてしまいます。楽しい夢から覚めたときのなんとも言えない感覚を思い出します。

子どもにも読みやすい、とてもやさしい言葉で書かれているけれど、「ぼく」はどこか大人びた思考の持ち主。ときどき彼の言葉にはハッとさせられます。
そして、やっぱり星新一さんの作品には古さを全く感じさせない普遍的なよさがあるなあ…と読むたびに思います。発行年を見ていつもびっくりします。
夜、自分が夢の国に旅立つ前につい思い出してしまう。とても素敵な作品です。

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